
Yoshimi Ito 伊東佳美
Pianist / Alexander Technique Teacher
Founder, Integration Piano Method
「どうしたら、もっと自然に弾けるのか?」
「どうしたら、もっと自由に表現できるのか?」
ピアノを弾き、教える中で、私はずっとこの問いを追い続けてきました。
テクニックを磨くだけでは解決しないことがあります。
身体の使い方が自由になっても、どんな音を出したいのかが分からなければ、表現にはつながりません。
音楽を深く理解していても、本番になると、思うように弾けなくなることもあります。
だから私は、ピアノ演奏をひとつの要素だけで考えるのではなく、
身体・テクニック・神経・感覚・音楽・本番での意識の使い方
をつなげて考えるようになりました。
その積み重ねから生まれたのが、Integration Piano Method(IPメソッド)です。
「自然に弾く」ことを探し続けて
私はもともと、ピアノを弾くことも、教えることも、ずっと続けてきました。
でもその中で、何度も同じ疑問にぶつかりました。
なぜ、練習しているのに思うように弾けないのか。
なぜ、分かっているのに身体がついてこないのか。
なぜ、本番になると、いつものように弾けなくなるのか。
そしてもうひとつ。
「もっと歌って」
「もっと力を抜いて」
「もっと自然に」
そう言われても、では、具体的に何をどう変えればいいのか?
そこが曖昧なままになっていることにも、ずっと違和感がありました。
だから私は、奏法だけを見るのではなく、
身体はどう動いているのか。
自分は何を感じているのか。
頭の中では何を考えているのか。
楽譜から何を受け取っているのか。
本番では脳や身体に何が起きているのか。
ひとつずつ、確かめるようになっていきました。
その探究の大きな転機になったのが、
アレクサンダー・テクニークとの出会いでした。
アレクサンダー・テクニークとの出会い
アレクサンダー・テクニークを学び始めて、私は少しずつ、
「弾き方を直す」のではなく、自分が何をしているのかに気づくことの大切さを知りました。
うまく弾けないとき、私たちはつい、
「もっと力を抜こう」
「腕を下げよう」
「手首を柔らかくしよう」
と、何かを新しくしようとします。
でも実際には、すでにやっている必要のないことをやめるだけで、身体はもっと自由に動けることがあります。
たとえば、身体を固めている。腕を必要以上に支えている。「こうしなければならない」と形を保とうとしている。
そうしたことに気づいて、やめる。
すると、それまで難しいと思っていた動きが、その場で急にできるようになることがあります。
この経験は、私のピアノの見方を大きく変えました。

できないのは、能力が足りないからとは限らない。
何か余計なことをして、自分で動きを邪魔しているだけかもしれない。
そして、その邪魔をやめれば、今この瞬間に、できる可能性がある。
この考え方が、今のIntegration Piano Methodの身体の学びの土台になっています。
でも、身体だけでは足りなかった
身体の使い方が変わると、演奏は確かに楽になります。
動きやすくなり、力みが減り、今まで弾きにくかったことが、急にできることもあります。
でも、そこでまた新しい疑問が出てきました。
身体が自由になったら、それだけで音楽は自由になるのだろうか?
答えは、そうではありませんでした。
身体が自由に動けても、
自分がどんな音を出したいのか。
その音楽をどう感じているのか。
楽譜から何を読み取っているのか。
そこが曖昧なままでは、表現にはつながりません。
そして、さらに本番になると、練習ではできていたことが急にできなくなったり、音を聴けなくなったり、頭の中が真っ白になったりすることもあります。
そこで私は、身体だけではなく、神経、感覚、注意、音楽の読み方、本番での脳の使い方へと学びを広げていきました。
身体を自由にすること。
感じる力を育てること。
音楽を読み取ること。
必要なテクニックを身につけること。
そして、「今ここ」で演奏すること。
それらは別々の問題ではなく、すべてがつながっている。そう考えるようになっていきました。
Integration Piano Methodへ
長い間、私はその時々に必要だと思うものを学んできました。
ピアノ奏法。
身体の構造。
アレクサンダー・テクニーク。
神経や感覚の働き。
音楽の読み方。
本番での意識や注意の使い方。
最初から、ひとつのメソッドを作ろうとしていたわけではありません。
ただ、「どうしたら、もっと自由に弾けるのか」という問いを追い続けてきました。
そして、演奏や指導の中でそれらをつなげていくうちに、
身体・テクニック・感覚・音楽・表現は、ひとつながりのものとして学んだ方がいい
という形が見えてきました。
それを体系化したものが、Integration Piano Method(IPメソッド)です。
Integrationという言葉には、バラバラに学ぶのではなく、すべてを統合して使えるようにするという意味を込めています。
今、私が伝えたいこと
ピアノを学ぶとき、
「正しく弾けること」
「間違えないこと」
「先生に言われた通りにできること」
が、いつの間にか目的になってしまうことがあります。
でも、本来、音楽はもっと自由なものだと思っています。
自分はどう感じるのか。
どんな音を出したいのか。
この音楽を、どう届けたいのか。
その答えは、誰かから与えられるものではありません。
自分の身体を感じ、音を聴き、楽譜を読み、いくつもの可能性を試しながら、自分自身で見つけていくもの。
だから私は、答えを教えることよりも、自分で感じ、考え、選べる力を育てることを大切にしています。
身体が自由になり、必要なテクニックが使え、自分の感覚を信頼できるようになると、演奏は少しずつ、
「正しく弾くもの」から、「自分の音楽を表現するもの」へ変わっていきます。
そしてそれは、ピアノの中だけの話ではないと思っています。
自分の感覚を感じ、今起きていることを受け取り、自分で選ぶ。
音楽を通して、その力を育てていくこと。
それが、今の私がピアノを通して伝えたいことです。
活動・資格・著書
学歴・研鑽
大阪音楽大学音楽学部ピアノ専攻卒業。
同学部専攻科修了。
1996年〜1998年、ベルリンに留学。
岡原慎也、クラウス・シルデ、福井博子、ジェルメーヌ・ムニエ、パスカル・ドヴァイヨンほか、20数名のピアニスト・ピアノ指導者に師事。
また、キャシー・マデン、トミー・トンプソン、ジェレミー・チャンス、ビビアン・マッキー、芹沢紀美子、安納献をはじめ、多くのアレクサンダー・テクニーク教師から学ぶ。
Alexander Technique International(ATI)認定教師。

演奏活動
東京、大阪、京都、福岡をはじめ、ベルリン、ザルツブルク、フランス、ルーマニア各地、モルドバ、ニューヨークなど、国内外で演奏活動を行う。
リサイタル、ソロコンサートのほか、協奏曲、室内楽、声楽・合唱の伴奏など、さまざまな形で舞台に立つ。
現在も、演奏活動と指導の両方を続けている。

指導・講演活動

全国各地で、ピアノ演奏、身体の使い方、アレクサンダー・テクニークなどをテーマにしたセミナーを200回以上開催。
海外でも、フィラデルフィアの大学での特別講義、ニューヨークのアレクサンダー・テクニークの学校、トロントでのワークショップなどで指導を行っている。
これまでの演奏・指導・身体・感覚・音楽についての学びを統合し、Integration Piano Method(IPメソッド)として体系化。
Integration Alexander Academyを主宰している。
著書・教材
『ピアニストのためのカラダの使い方バイブル
〜アレクサンダー・テクニークを取り入れながら』
学研
子どものためのピアノ導入教材
『ぷれぴあのふぁん』『ぴあのふぁん』シリーズを制作。

雑誌『エレガンテ』(SHIGERU KAWAIオーナーズマガジン)、『あんさんぶる』(カワイ音研会)などに連載・寄稿。
CD

『Consolation』
Yoshimi Ito
受賞
ルーマニアにて指導者賞を受賞。
※正式名称は確認後追記予定。