なぜ、レッスンだけではなく講座なのか

ピアノを習うというと、

先生に自分の曲を見てもらう「レッスン」

を思い浮かべる方が多いと思います。

もちろん、Integration Alexander Academyでも、実際の演奏を見ながら学ぶ時間をとても大切にしています。

でも、アカデミーの学びをすべて個人レッスンだけで行うことは難しいと考えています。

なぜなら、私たちが学んでいるのは、ひとつの曲を、どう弾くか だけではないからです。

レッスンだけでは、時間が足りない

ピアノの演奏には、たくさんの要素が関わっています。

身体の構造。
身体の使い方。
脱力。
演奏テクニック。
脳と神経。
感覚。
音の捉え方。
楽譜の読み方。
音楽の流れ。
表現。
本番での注意の使い方。

たとえば60分のレッスンで、今弾いている曲を見ながら、

「今日は上腕二頭筋について学びましょう」
「次に脳の仕組みについて考えましょう」
「では、音程をどう感じるか試しましょう」
「そのあと和声とフレーズを読みましょう」

……とやっていたら、肝心の曲を弾く時間がなくなってしまいます。

でも、これらはどれも、演奏を自由にするために大切なことです。

だからIntegration Alexander Academyでは、

レッスンの中だけですべてを教えようとしない

という方法をとっています。

まず「仕組み」を学ぶ

講座では、その場の一曲だけに使える方法ではなく、

身体や演奏が、そもそもどういう仕組みになっているのかを学びます。

たとえば、

「ミスタッチを無くしたい」ときに、その場で先生に練習方法を聞くのではなく、

どのように身体を使っているのか。
なぜそれを使ってしまうのか。
どうすれば自分でその働きをやめられるのか。

まで理解する。

そうすれば、別の曲で同じことが起きたときにも、自分で気づき、自分で変えることができるようになります。

講座で学ぶのは、いわば「答え」ではなく、「自分で答えを見つけるための仕組み」です。


そして、実際の演奏で使ってみる

知識を学ぶだけでは、演奏は変わりません。

そこでアカデミーでは、知る → 試す → 感じる → 演奏で使うことを繰り返します。

テクニック実践編や「みんなで表現しよう♪」などでは、実際に自分の曲を弾きながら、

今学んだことを、この曲ではどう使うのかを試していきます。

つまり、講座とレッスンのどちらか一方ではありません。

講座で仕組みを学び、実際の曲の中で使い、また講座で理解を深める。

この往復によって、学びが自分のものになっていきます。

「みんなで学ぶ」ことにも意味があります

グループでの講座について、

「自分の演奏だけを見てもらう個人レッスンの方が、たくさん学べるのでは?」

と思われることもあります。

でも実際には、他の人を見ることで初めて分かることがたくさんあります。

「同じフレーズを弾くこと」でも、人によって手の大きさや指の関節の柔らかさは違います。

「私はこの指づかいでは弾きにくい」
「私はむしろこの使い方の方が、柔らかい音色になる」

と、身体の使い方が違うこともあります。

誰か一人の演奏を題材にしていても、

その人に何が起きているのかを見ること自体が、自分自身を理解する学びになります。


他の人を見るから、自分の「普通」に気づける

自分がいつもやっていることは、自分にとっては「普通」です。

だから、身体を固めていても、余分な動きをしていても、ある考え方にとらわれていても、自分では気づかないことがあります。

ところが、他の人の身体や演奏を見ると、「あれ? 私も同じことをしているかもしれない」と気づくことがあります。

逆に、「同じことをしていると思っていたけれど、人によってこんなに違うんだ」と分かることもあります。

グループで学ぶことは、自分だけを見ているよりも、たくさんの例から学べるという大きな利点があります。


音楽には、ひとつの正解がないから

表現について学ぶときには、グループであることがさらに大きな意味を持ちます。

同じフレーズでも、「私はこう感じる」という人もいれば、

「私は全然違う感じがする」という人もいます。

どちらかが間違っているとは限りません。

いくつもの感じ方や表現を知ることで、「こんな捉え方もあるんだ」と、自分の選択肢が増えていきます。

そして最後には、では、自分はどう弾きたいのかを選ぶ。

先生から一つの正解をもらうのではなく、いろいろな可能性を知ったうえで、自分で選べるようになる。

これも、Integration Alexander Academyがグループでの学びを大切にしている理由です。

安心して人前で弾ける場所をつくる

人前で演奏することに、怖さを感じる人は少なくありません。

「間違えたらどうしよう」
「失敗したら恥ずかしい」
「評価されるのが怖い」

そうした経験が積み重なると、人前で弾く=怖いという感覚が強くなっていきます。

でも、本来、演奏は誰かに評価してもらうためだけのものではありません。

演奏は、コミュニケーションです。

自分が感じているものを音にして、誰かとその時間を共有すること。

Integration Alexander Academyでは、そのことを安心して体験できる場を大切にしています。

「怖い」から「楽しい」へ

アカデミーの仲間は、演奏する人を「採点する人」ではありません。

同じように学び、悩み、挑戦してきた仲間として、

自分のことのように応援してくれます。

誰かが人前で弾くとき、「うまく弾けるかな」を聴くのではなく、

その人が何を感じ、何を表現しようとしているのかを一緒に受け取ります。

そうした安心・安全な場で演奏する経験を重ねると、人前で弾く=怖いというこれまでの結びつきが、少しずつ、

人前で弾く=楽しい
誰かと音楽を共有する=うれしい

という経験へ変わっていきます。

「なごみちゃん」が働ける演奏へ

Integration Alexander Academyでは、安心して人とつながっているときの状態を、親しみを込めて「なごみちゃん」と呼んでいます。

怖さや緊張がなくなることを目指すのではありません。

緊張していても、

ここにいて大丈夫。
この人たちは自分の演奏を受け取ってくれる。
一緒に音楽をつくっている。

と感じられること。

その安心感があることで、周りの人やその場とつながりながら演奏しやすくなります。

すると、人前で弾くことが「自分ひとりで失敗しないように頑張る時間」ではなく、

聴いている人と一緒に音楽を体験する時間へ変わっていきます。

仲間の演奏が、自分の経験にもなる

そして不思議なのは、演奏している本人だけが学んでいるのではないことです。

誰かが挑戦している姿を見て、変化していく演奏を聴いて、みんなでその人を応援する。

その経験は、聴いている側にとっても、「自分もここで弾いていいんだ」という安心につながっていきます。

だから、アカデミーで誰かが人前で演奏する時間は、一人のためだけのレッスンではありません。

その場にいるみんなでつくる、何にも代えがたい学びの時間になります。

レッスンの目的も変わります

講座で身体やテクニック、感覚、音楽について学んでいると、レッスンの時間そのものも変わってきます。

一からすべてを説明する必要がないので、「この曲の、この場所で、今の自分には何が起きている?」

というところから始めることができます。

そして講師は、身体の使い方や音を見ながら、必要のないことが起きていないか。
どんな考え方が動きを作っているのか。どんな選択肢があるのか を一緒に探していきます。

目指すのは、「家で練習してきたら、いつか弾けるようになる」ではありません。

まず、その場で「あ、できる」という状態を体験すること。

そして、何が変わったからできたのかを自分で感じ、理解し、次にまた使えるようにしていきます。

「教えてもらう」から、「自分でできる」へ

Integration Alexander Academyが目指しているのは、

ずっと先生に答えを教えてもらい続けることではありません。

講座で仕組みを知り、他の人からも学び、自分で試し、違いを感じ、実際の曲で使ってみる。

その経験を繰り返すことで、

自分で気づき、
自分で考え、
自分で選び、
自分で演奏を変えられるようになる。

そのために、私たちは「レッスンだけ」ではなく、講座という学び方を取り入れています。


講座と実践をつなげて学ぶ

Integration Alexander Academyでは、講座で学ぶことと、実際にピアノを弾くことを分けて考えていません。

知識だけでもなく、レッスンだけでもなく、

知る → 感じる → 試す → 演奏する → 気づく → また選ぶ

その循環そのものが、学びです。

そして、その積み重ねによって、先生に教えてもらわなければ弾けない演奏から、自分自身で音楽をつくれる演奏へ つなげていきます。